北前船の寄港地として栄えた黒島地区は、当時の面影を残す町並みが魅力です。
輪島市黒島地区伝統的建造物群保存地区は、石川県輪島市にある、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されているエリアです。この地区は、江戸時代から明治時代にかけて北前船の寄港地として栄え、当時の面影を色濃く残す町並みが魅力です。黒島地区は、西は日本海に面し、砂浜から東方の山裾に上る緩斜面に街道に沿って南北に長く形成されています。集落の成立は16世紀前半と伝えられており、16世紀後期には廻船業を始めた番匠屋善右衛門が加賀一向一揆の用米を運んでいます。江戸時代に入ると北前船の船主が現れ、日本海航路による海運業の発展を背景に集落は成長を遂げました。江戸中期に150戸程の家数は、明治前期には500戸を超え、集落は街道に沿って南北に伸びて現在の町並みの骨格を形成しました。保存地区は、東西約680m、南北約1300m、面積約20.5ha の範囲で、全盛期の頃の集落全域及びこれと関連する墓地等を含む。往時の道路や敷地割が良く残り、街道沿いを中心に伝統的な主屋が建ち並ぶ。片側を通り土間とし、中央にチャノマを置き、床と仏間を設けたザシキを表通りに面して置くものが多く見られ、中でも船主の住宅は中庭をコの字で囲む独特の平面形式を見せる。時代により構造形式に違いが見られるものの、黒色の釉薬瓦、外壁の下見板張り、正面開口部に取り付く格子が町並みに統一感を与える。平成19年3月の能登半島地震で大きな被害を受けつつも、最も栄えた明治初期の地割を良好に残し、伝統的な主屋が敷地内の庭園や土蔵、社寺建築、石造物、樹木と共に歴史的風致を良く伝え、我が国にとって価値が高い。輪島市黒島地区伝統的建造物群保存地区は、北前船の船主や船員の居住地として発展した集落であり、歴史と文化を感じることができる貴重な場所です。